第20回 あるハンバーガーショップの倒産
アメリカのある町に、大変繁盛しているハンバーガーショップがありました。父親も立派なら、息子も出来が良くしかも親孝行でした。大学の修士課程を間もなく終え、地元に帰って父親の後を継ぎたいと言います。父親にしてみれば、なんという孝行息子を持ったものだと大満足です。
息子は、「お父さん、僕の見方ではアメリカは間もなく不況になる見通しだよ。そこで、この店の診断をして対策を打ち出したいと思うのだけれど、どうだろうか?」
父親は、出来のよい息子の提案に一も二もなく飛び付きました。
息子は綿密な診断の結果こう結論づけました。
「お父さん、うちの店は繁盛しているけれど、次の問題点があります」
・ハンバーグの肉の量が他の店より10%も多い
・店の前のネオンサインは、みんなが知っているから無駄なコストだ
・営業時間は、朝7時から夜11時までとなっているが、客数を調べると7時~8時はわずか数人。夜も10時以降はグッと減って余分の経費がかかるなど
さすがに経営学修士になる息子は、こと細かく具体的に改善策を指摘しました。そして、父親は息子の言うとおりにしました。
間もなく、父親のハンバーガーショップは倒産してしまいました。父親は言いました。
「息子の言う通り、不況がやって来た。さすがにうちの息子は大したものだ」
現場を知らない、あるいは、現場を見ない経営者が世の中にはいます。そうした経営者が導く企業の行く末を暗示しているのではないでしょうか。