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第10回 単純接触効果

アメリカの社会心理学者であるザイアンスは、人に対する接触回数と相手に対する評価の相関性に関する実験を行いました。
ザイアンスは被験者である学生に10名強の顔写真を瞬間的に見せ、その回数に変化(0回~25回)をつけて実験を行いました。
その後で、顔写真をじっくり見させ、「どの程度好意を抱くか」を7段階で評価させたのです。

その結果、会った事もない相手の顔写真にもかかわらず、より多く見せられた顔写真に対しての評価が高くなっていました。
このように、視覚や聴覚などの五感に特定の刺激を繰り返し与えて接触させるだけで、その刺激や刺激をもたらす人や物に対して好意的な態度が形成されることを「単純接触効果」といいます。

目新しい刺激は、安定を求めて未知や不安を嫌う傾向が強い人間にとっては不快なものですが、繰り返し接触することで慣れを生み出し、やがて好意が優勢になるとされます。
対象が物であっても人であっても企業であっても、広く普遍的に観察される心的傾向とされ、特に相手が人である場合は、積極的な働きかけを行わなくても、面会の頻度や一緒にいる時間が長ければ、相手を好ましく思う感情が育ちやすくなります。

ザイアンスのような実験を行うまでもなく、たとえば、営業マンの場合なら、「とにかく顔を出す」「用事がなくても出向く」「訪問時には次回の訪問の口実となる宿題を作り出す」といった経験則から、人の好き嫌いの感覚に影響を与える要素として広く認識されています。