第11回 権威に服従する心理
人は、権威をもっている人には弱いものです。
そうした「権威に服従する心理」を検証するため、米国の社会心理学者スタンレー・ミリグラムは、次の実験を行いました。
被験者を、「生徒役」と「教師役」に分けてペアを組ませ、実験を遂行させる「命令役」をそれに加えます。ただし「生徒役」は、この実験の協力者であり、役割を与えられます。その役割とは、実際には流れない電気ショックを与えられた際に、悲鳴を上げたり、抗議をするなどの演技を行うことです。一方、教師役は何も知らされていません。
教師役は問題を出し、生徒役が答えを間違えると、命令役から電気ショックを与えるよう命じられます。電気ショックは15ボルトから450ボルトまで30段階あって、間違うたびにレベルが上げられます(とされます)。
生徒役の苦痛の反応を見た教師役が「電気ショックを与えるのをやめていいですか?」と申し出ても、命令役は「罰の効果を見る実験なのですから、続けなくてはなりません」と、強硬な態度で教師役にプレッシャーをかけ続けます。
すると、教師役(一般被験者)の62.5%が、最大の450ボルトになるまで電気ショックを与え続けたのです。
悪いことだと思いながらも、命令役(=権力)に服従してしまうのは、命令を下す権威者だけに敏感に意思が向くようになり、「自分は命令に従っているだけだから悪くない。最終責任は命令を出している命令者だ」と自分の正当化が強まっていくからです。