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第15回 「データを「みる」こと、事実(現場)を「観る」こと

医学雑誌に「騒音が患者の回復に及ぼす影響について」という論文が掲載されました。
それはいろいろな病室の騒音と、その病室に入っている患者の入院から退院までの日数の回復度との関連をデータで示したものでした。

この論文によると、騒音の小さな病室の患者の方が、回復が早いと結論づけていました。
しかし、この論文を見て「はてな?」と思った先生がいました。
その病院は、病室が患者の重症度によって分けられていました。そこで調べてみたら、次のようなことが分かったのです。

その病院は、症状の重い患者は下の階に入れ、軽症者を上の階に入れる。そして騒音は下の階が大きく、上の階は静か。何のことはありません、治りやすい患者を静かなところに入れていたのです。

人間はわずかなデータであっても、自分の考えにピッタリ一致した事実を発見すると、ついそれをう呑みにしたくなるものです。

統計でものを判断するには、データの取り方に注意しなければいけないし、また、様々な面から事象をみなければならないという例です。

先週取り上げたテーマの「“みる”ということ」にも共通する教訓と言えます。