第17回 ちょっとだけなら、、、
■その1 ちょいと一杯のつもりで飲んで・・・
ある村で、田子作と権太という2人の若者が酒作りをしていました。今年も努力の甲斐あって、いい酒ができたので、2人は早速町へ売りに行くことにしました。
荷車を引いてしばらくすると、田子作は「権太、おいらは喉が渇いた。一杯だけ酒を飲ましてもらえんか。銭は出すからよ」
権太は「銭を出すなら、いいだよ」と言って金を受け取りました。しばらく行くと、「オイ、田子作や、オラも喉が渇いただよ。オラにも酒を飲ましてくれ」
そうして、お互いに銭を出したり受け取ったりしながら、町に向かいました。
さて、町に着いて、酒を売ろうとして酒樽を見ると、樽の中は空っぽになっていました。
■その2 水の酒盛り
ある村で、若い衆が集まって酒盛りを開くことになりました。
寄合所に三々五々若い衆が集まってきました。日頃から腹黒い次郎兵衛は、「オラ1人ぐらい水を入れていっても、バレることはあるめえ」と、徳利の中に酒の代わりに水を入れてやってきました。
次郎兵衛は、「ホレ、みんなのために飛びっ切りいい酒を持ってきただよ。みんな飲んでくれや」と得意気に言い回りました。他の若い衆も、それぞれ持ってきた酒を大きな釜に入れました。
燗をつけ、お互いに酒をさしつさされつ、酒盛りが始まりました。
みんなが飲んだ酒は、ただのお湯だったのでした。