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第22回 経済行為も感情が左右する

2002年に、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン博士(プリンストン大学教授)はニューロエコノミクス(神経経済学)を考案しました。

人の経済行動は、理性だけでなく、「感情」を重視するというものです。
これまでの経済学は、人が株を買ったり売ったりする時に、極めて理性的に判断するという大前提に立っていました。

しかし、最新の脳科学や認知心理学は、人間はいくら理性的になろうとしても、決して理性一辺倒になれる動物ではなく、理性(IQ=知能指数)と感情(EQ=感情指数)がバランスよく機能してこそ生きていける動物だということを明らかにしたのです。

例えば、人は100万円損してからその後110万円儲かることができると分かっている株(結局、10万円の儲けを得る株)を買うのと、5万円を儲ける株を買うのと、どちらかを選ばないといけない場合を考えてみましょう。

理性的に考えれば10万円の儲けをする株を買うのが正しい。しかし、最初に100万円損をする株を買う恐怖に打ち勝つ理性的な選択をするのは、並大抵の感情のコントロールでは成し遂げられないものです。
このように人の脳は、時には理性的になることもあるが、大抵は感情に振り回されているのです。
古代ギリシャの哲学者であるエピクテトスはこう言っています。

「私たちは、自分に起きる出来事によって心を乱されるのではなく、出来事に対して自分が抱く思考によって心を乱される」