第24回 他人の欠点と自分の欠点
全能の神ゼウスは、ある時すべての動物におふれを出しました。
「体のつくりに不満があるものは訴え出るがいい。私が治してあげよう」と。
最初に猿が来て言いました。
「私はこれまで不満を抱いたことはありません。それにひきかえ、熊ときたら中途半端なでき具合でひどいものです」
次に、熊が来ました。
「私の体のつくりは完璧です。しかし、あの像の不格好さを何とかすべきです。もっと尻尾を長く、耳を小さくしたらよかろうと思います」と言いました。
像も不満はないと言い、「クジラは体が大きすぎます」と言いました。
そのクジラは、アリの体は小さすぎると言い、アリは「ダニは小さい。それに比べると自分の体は大きく、欠陥などありません」とゼウスに告げました。
ゼウスは、動物たちの自己満足に呆れて、おふれを取り下げたといいます。
一方、見方を変えたこんな話もあります。
猿はこう言いました。「人間に似ているのが気に入りません。それなのに顔も手足も格好悪く、おまけに全身毛だらけ。もっと格好よくつくり直してください。さもなければ、あの熊のように、獣らしくしてください」その熊は「像に比べて貧相です。像のように耳を大きくしてください」と言いました。
像は「クジラを大きくつくったのは納得できない。自分を一番大きくしてください」と言い、アリは「私は休むことなく働きづめなのです。ダニのように血を吸って楽に生きるようにしてください」と言いました。
ゼウスは、動物たちの果てしない不平不満に怒って「このままどこかへ消えてしまえ」と言いました。
(ラ・フォンテーヌ「寓話」)