第26回 王様と床屋
昔、インドの王様が床屋にひげを剃らせているときに、人々の暮らし向きはどんなふうかと尋ねてみました。床屋はにこにこして
「さようでございます。みな裕福で、一番貧しい者でも、レモンの実くらいの黄金を持っているようでございますよ」と答えました。
王様はこの景気のいい話を大臣にして、本当にそうであるかどうか、調べさせました。
賢い大臣は、まず床屋の家に忍び込んで、レモンの実ほどある黄金の玉を見つけました。それを懐に入れて宮殿に帰り、王様に、
「調べてまいりましたが、結果を申し上げる前にもう一度床屋に意見をお尋ねくださいまし」と言いました。
翌朝、床屋は黄金の玉が紛失しているのを発見して、夢中で探したが見つかりませんでした。
王様はその日ひげを剃らせながら前の日と同じことを聞いてみました。すると床屋はため息をついて言いました。
「昨日は本当のことをよく見ないで申し上げました。実際のところ、みな暮らしは大変苦しいようでございます」
王様がこの話を大臣にすると、大臣は調べたやり方を打ち明け、「こんなふうに、人は何でも自分のことから割り出して判断するものでございます」と言いました。
(インドのとんち百話)