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第32回 ヤークス・ドッドソンの法則(Yerkes–Dodson law)

この法則は、人間や動物の「ストレス(緊張・興奮の度合い)」と「パフォーマンス(作業成績)」との関係を示す心理学上の法則です。
1908年にアメリカの心理学者ロバート・ヤークス氏とジョン・ドッドソン氏は、ネズミを使った実験によってこの関係を明らかにしました。

迷路を使って電気ショックの強さを変化させながら学習の速さを観察したところ、刺激が弱すぎると学習が進まず、強すぎると恐怖で行動が乱れ、適度な刺激のときに最も学習効果が高かったという結果が得られました。この結果を一般化し、人間の学習や仕事、スポーツなどにも当てはめて説明されるようになったのです。

ただし、生産性やストレスには限界値があるので、計算上はその生産性が最大となるポイントが存在することになります。
しかしそのバランスが崩れたとき、全体の生産性は低下するのです。例えば、以下のケースで現れやすくなります。

①従業員に職務要求水準を上げ、過度なストレスを与えたとき
②リストラなどで残った従業員の能力の総和が低下したとき

この法則は、現代のビジネス心理学やストレスマネジメントの分野でも重視されています。「適度なプレッシャーは能力を引き出し、過剰なストレスは能力を奪う」という考え方は、人材育成や職場のマネジメントにも応用されています。

したがって、企業や組織は、人のストレスと能力の水準を見極めながら政策を展開していくことが求められます。 言い換えれば、全体の生産性が低下したとき、ストレスが限界値に達したのか、全体の能力が低下したのか(リストラなどで)を的確に判断することが必要です。