第45回 「悪魔の証明」
「悪魔の証明」とは、存在しないことを証明せよと迫る不合理な論法です。
例えば、女性の遺体が発見され、近くに住む男性が逮捕されたとします。男性が無実を訴えても、警察が「やっていないなら証明しろ」「誰かに殺させていないなら証明しろ」と追及するのは、その典型例です。
不在の事実を示すには、あらゆる場所、あらゆる時間、あらゆる人間関係について「何もしていない」ことを説明しなければならず、現実には不可能に近いからです。
この構図はビジネスの場にも頻繁に現れます。上司が「サボっていないなら証明しろ」、経営者が「コンプライアンス違反が絶対に起きないことを証明しろ」と迫るのは、いずれも「悪魔の証明」です。悪魔の証明を押し付ける組織は、知らないうちに弱い立場の人を追い詰め、公平さへの信頼を失っていきます。
プロジェクトでも「トラブルが一切発生しないと証明してほしい」「クレームがゼロであることを証明しろ」と言われることがあります。しかし、将来の出来事を完全に否定することは誰にもできません。
重要なのは、起こり得るリスクを洗い出し、その発生確率や影響度、具体的な低減策を示すことです。
本来は、「ある」と主張する側に、根拠やデータ、事実関係の提示を求めるのが筋ですが、あまり論理的に言うと、相手の感情を害すことになる恐れがあります。
理不尽な要求を受けたときには、「その点について、どこからお答えすればよいのか少し分かりにくいところがありますので、気になっている点を教えていただけると助かります」と冷静に伝えることが大切です。
この考え方を身につければ、感情的な押し付けに振り回されず、公正で合理的な議論と健全なビジネス判断を維持しやすくなります。
