第49回 なぜ、ネアンデルタール人は絶滅したのか(脳の発達と社会性の不思議な関係)
ネアンデルタール人は、ほぼ20万年間にわたってユーラシア大陸に散らばって暮らしており、その数は1万5000人程度だったと推定されています。彼らはかつて現生人類と共生していましたが、約2万8000年前に絶滅し、現生人類は生き残りました。なぜネアンデルタール人は滅びたのでしょうか。『ナショナルジオグラフィック』では、両者の社会性の違いに注目し、それが脳の発達に影響したという説を紹介しています。
ネアンデルタール人は、がっしりした体を維持するために高カロリーの食事を必要としていました。そのため、ウマやシカ、野牛などの大型から中型の哺乳類を捕らえる狩猟生活にほぼ完全に依存していたと考えられています。特に高緯度地域や気候が厳しくなった時期には、性別を問わず狩猟に出る必要があったとみられています。狩りは荒々しく、危険を伴う仕事でした。
一方、現生人類は、男性が大型の獲物を追って狩りをし、女性や子どもは小動物を捕まえたり、木の実や植物を採集したりするという分業が成り立っていました。このような集団内の分業によってリスクを分散することができ、妊婦や幼児が守られるとともに、効率的な狩猟採集によって食生活も多様になっていたと考えられています。
また、ネアンデルタール人が三世代ほどの大家族規模の集団で生活していたのに対し、現生人類の集団はより大きな規模であったことも、脳の発達に影響したのではないかと推論されています。
集団が大きくなれば、人と人とのやり取りは自然と増えます。成長の過程で脳の働きが活発になり、その結果として言語の発達が促されます。さらに、間接的には平均寿命の延びにもつながり、世代間で知識が伝えられる機会も増えるという好循環が生まれます。
このように、現生人類とネアンデルタール人の間には、社会への適応力と脳の発達に違いが生まれ、それが「種」を保存する力の差につながったと考えられます。これは、組織集団とそれを構成するメンバーとの関係にも、どこか通じるものがあるのではないでしょうか。
