第50回 なぜ「みんなで話し合う組織」ほど、判断を誤ってしまうのか
1人で考えると当然否決すべきと思われるような提案が、みんなで話し合っているうちになぜか通ってしまう。このような現象のことを心理学では「リスキー・シフト」といいます。
米国の心理学者ワラックとコーガンは被験者を集めて、意思決定の実験を行いました。
ある課題について、2つの選択肢を用意し、それぞれ軽重の異なるリスクを設定。
①魅力的だがリスクのある選択肢
②リスクはないがあまり魅力的でない選択肢
被験者たちには12の質問を用意し、上記の選択肢のどちらを選択するかについて、「個別に判断する」場合と「集団で話し合って判断する」ケースに分けて、その結果を分析しました。(なお、ここでは、紙面の都合で代表的な3つの質問を紹介)
ケース1:雇用の問題
①かなりの高給が見込めるが、雇用の保証はない仕事に転職する
②高給とは言えないがそれなりの給料がもらえ、雇用が保証されている今の職にとどまる
ケース2:命にかかわる難しい手術の問題
①失敗すると命にかかわるが、成功すれば自由な生活が手に入る難しい手術をする
②手術をしなければ命の危険はないものの、この先ずっと不自由な生活を強いられる
ケース3:ビジネスで海外に進出する問題
①内乱などのリスクがあるが、利益の伸びが期待できる発展途上国に進出する
②リスクはないが、利益の伸びがあまり期待できない国内にとどまる
実験の結果は、12問のいずれにおいても、集団で決めた場合の方が、①の「魅力的だが、リスクのある選択肢」を選ぶ傾向が確認されたのです。
集団で話し合って決めると、なぜリスキーな判断になってしまうのでしょうか。
その理由としては、みんなで決めると気が大きくなってリスクを恐れず大胆な結論を下す傾向が高まること、そして「責任の分散」心理が働くということがあるからです。
みんなで決める場合、1人で決める場合とは異なり、自分だけの責任ではないため、各自の責任感が薄れてしまい、慎重さが失われるということが背景にあるのです。
