第63回 後知恵バイアス(結果バイアス)
ダニエル・カーネマンの著作「ファスト&スロー」からの引用です。
予想外の事象が起きると、私たちはそれに合わせて自分の世界観を修正するものです。例えば、サッカーで、実力が拮抗しているチームAとチームBが試合をしたとします。この試合でAがBに圧勝すると、多くの人は「AはBよりずっと強い」と認識してしまいます。そして、この新しい認識のもとで、過去の印象も将来の予想も調整されることになります。これが「後知恵バイアス」または「結果バイアス」と呼ばれるものです。
イスラエルの学者2人は、次のような実験を行いました。
1972年、当時の米国大統領リチャード・ニクソンが中国・ソ連を訪問する前に、この外交に関して起こりうる結果を15項目挙げ、参加者にそれぞれの確率を推定してもらいました。15項目の中には、「毛沢東はニクソンとの会談に応じる」「アメリカは中国を承認する」「数十年にわたり反目し合っていた米ソが何らかの重要事項で合意に達する」などが含まれていました。
そして、ニクソンの帰国後に、再び同じ参加者に対し、自分たちが15項目それぞれに推定した確率を思い出してもらいました。結果は明快でした。
実際に起きたことについては、自分がつけた確率を多めに見積もり、起きなかったことについては「そんなことは起こりそうもないと思っていた」と、都合よく思い違いをしていたのです。
その他、世間の注目を集めた出来事でも、同様の傾向が確認されました。実際にことが起きてから、それに合わせて過去の自分の考えを修正する。こうした心理的傾向は、強い認知の錯覚を生むのです。
後知恵バイアスは、意思決定者の評価にも致命的な影響を与えます。評価する側は、結果がよかったか悪かったかで意思決定者を評価しがちです。
私たちが結果バイアスに陥って人物や判断の評価を誤らないようにするには、結果だけでなく、その時点での情報と判断の筋道を丁寧に見ることが必要です。
