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第57回 「流動性知能」と「結晶性知能」

人間の心理構造に関する心理測定学的研究で知られるアメリカの心理学者レイモンド・キャッテルは、知能を「結晶性知能」と「流動性知能」の2つに分けました。

「流動性知能」とは、前例のない課題や未知の状況に対して、その場で考え、筋道を立てて解決策を導く力です。
たとえば、新しい市場環境への対応、複雑な問題の整理、急なトラブルへの判断、データから仮説を立てる力などが該当します。こちらは、知識量そのものよりも、思考の速さ、柔軟性、論理的な処理能力に関わる力です。
この知能のピークは25歳ごろまでであり、65歳前後で低下がみられます。そのうち、記憶力や暗記力は40歳代後半から急速に低下します。しかし、語彙力は若干低下する傾向はあるものの、さほど大きく低下するものではないといいます。

一方、「結晶性知能」とは、知識の積み重ねによって伸びる力です。つまり、過去の経験が土台になる専門的または個人的な能力を指し、免許や学位などの専門的な知識や、料理などの日常の習慣、長年にわたる趣味の手順や方法など、いわゆる経験知や判断力も結晶性知能にあたります。
この結晶性知能は60~70歳前後まで緩やかに上昇し、74歳以降緩やかに低下しますが、80歳ぐらいまでは20歳代頃と同程度の能力が維持されるといいます。
つまり、業績の向上(仕事の能力)につながる経験を「結晶性知能」とすれば、肉体さえ元気なら年齢を重ねても業績に貢献することが可能なのです。

ビジネスマン個人としては、若いうちに知識と経験を蓄積し、年齢を重ねても新しい課題に向き合って考える習慣を失わないことが大切です。
「知識を深めること(流動性知能)」と、「考える力(結晶性知能)」を鍛え続けること。この両輪が、長く成果を出し続ける人材をつくるのです。

この2つの知能をビジネスの現場で活用するには、若手は流動性知能を武器に新しい挑戦を担い、ベテランは結晶性知能を生かして精度の高い判断や後進育成を担う。この組み合わせが、組織全体の力を高めます。