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第59回 「トムの胃」 上機嫌のふりをしていると本当に上機嫌になる

心と体というものは、私たちが考えている以上に、深く密接につながっています。
「トムの胃」という話をご存じでしょうか。

ニューヨークに住んでいたトムは、9歳の時、誤って熱いクリームチャウダーを飲み、食道にひどい損傷を受けました。その傷のため、腹壁に開けられた開口部から、胃の内面の一部を常に外へ出しておく必要がありました。そのためトムは、自分でその開口部から胃に直接、食物を入れなければなりませんでした。

この状態によってトムは、自然に起こる感情や、意図的に引き起こされたさまざまな感情の動きによって、胃の粘膜がどのように変化するのかを、直接観察することができたのです。

その観察によって分かったことは、トムが怒って顔を赤くした時には、胃の内部もまた赤くなり、恐怖を感じて顔が青ざめた時には、胃の内部も同じように青ざめるということでした。そして、粘膜が青白くなるにつれて、胃酸の分泌活動と筋肉の活動は、どちらも次第に弱まっていきました。一方、トムが怒りを感じた時には、血液の供給が増え、粘膜が充血し、胃酸の分泌も高まったといいます。
これはまさに、心と体のつながりを物語るものです。

私たちも、悲しい時に一人で涙に暮れていると、悲しみがいっそう深まり、体まで重く感じられることがあります。

アメリカの心理学者ウィリアム・ジェイムズは、「快活さを失った場合、それを取り戻す最善の方法は、いかにも快活そうに振る舞い、快活そうに話すことだ」と語っています。

野球でもサッカーでも、監督はよく「声を出せ」と言います。調子が落ちたり、追い込まれたりしてくると、選手の声は小さくなっていきます。そうした時に、互いに声をかけ合い、大きな声を出していると、自然に体が動くようになり、勢いも生まれてきます。それが人間というものなのでしょう。