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第60回 マクドナルドのメニュー実験(心の免罪符)

ニューヨーク市立大学バルーク校の研究グループが、マクドナルドの模擬店舗を用いて次の実験を行いました。
模擬店舗を訪れた被験者に、次の2種類のメニューリストを用意します。
①サラダなどメニューが載ったリスト(健康を連想させる)
②サラダなどが載っていないリスト

被験者には、そのうちのいずれかのメニューを渡し、最もカロリーの高い「ビッグマック」を選ぶ割合について調べました。ビッグマックを選ぶ割合は、どちらのメニューを渡された人の方が多かったのでしょうか。

一般的には、②のサラダなどが載っていないリストを受け取った人の方が、ビッグマックを選ぶ割合が多いと思うでしょう。しかし、そうした予想とは逆の結果が出たのです。
すなわち、サラダが掲載されていないリストを受け取った群では、ビッグマックの注文率が約10%だったのに対し、サラダが掲載されているリストを受け取った群では約50%にも上ったといいます。

このような結果になった理由について、脳科学者の中野信子氏は、次のように分析しています。

これは、人間が「良いこと」または「倫理的に正しい」何かを想像しただけで、免罪符を得たような気分になってしまうからです。
サラダが載っているリストを目にした人たちは、そこで健康という倫理的正しさを想像します。ただそれだけのことで、「私は健康について倫理的に正しいことを考えている」と判断し、「だから、ビッグマックを食べてもいい」と自分を許してしまうのです。サラダが載っていないリストであれば、そのようなことは起きないにもかかわらず、サラダが載っていたために、かえって免罪符を得てしまうわけです。

これと同様のことは、私たちの日常でも起こります。例えば、企業や個人の不適切な発言がSNSで拡散された場合などに、当事者とは無関係の一般人がSNSで激しく攻撃することがあります。これは、「社会とはこうあるべきだ」「人間とはこうあるべきだ」と、日頃から「倫理的に正しいこと」を考えている人ほど、脳にたくさんの免罪符が貼り付けられており、それが結果的に、「倫理的に正しくない」残虐な行動につながってしまうということです。